バラ科の植物は、世界に75~90属、約3000種あるとされています。
バラ科はさらにチョウノスケソウ亜科、サクラ亜科、バラ亜科の3亜科に分かれます。
(ただし3亜科の形質の違いは小さいので、亜科への分類を認めないという考え方もあります。)
バラ亜科の植物は、約30属1200種あるとされています。
バラ属やダイコンソウ属、シモツケソウ属、ワレモコウ属、キジムシロ属、イチゴの仲間などがバラ亜科の植物になります。
参考図書 「新維管束植物分類表」米倉浩司 「新北海道の花」梅沢俊 ほか
バラ属
ノイバラ
バラ目バラ科バラ亜科バラ属ノイバラ
高さ2mほどになる落葉樹で、花期は6月です。野山の明るい場所に生えます。
枝と葉柄に鋭いトゲがあります。

花は円錐花序につき、径2~3cmです。

花弁は5枚、雄しべと雌しべは多数あります。

葉は奇数羽状複葉で、小葉は3~4対あります。





ハマナス
バラ目バラ科バラ亜科バラ属ハマナス
高さ50~150cmになる落葉低木で、花期は6~7月です。

葉は奇数羽状複葉で、小葉は7~9枚です。
枝には短毛とトゲが密生します。

花は枝先に1~3個つき、花弁とがく片は5枚、雄しべと雌しべは多数あります。
海岸の砂丘や草地、れき地に生えます。



果実は球形で赤く熟し、食用になります。
ハマナスの名前は、浜梨(ハマナシ)が転化したものだそうです。




キンミズヒキ属
キンミズヒキ
バラ目バラ科バラ亜科キンミズヒキ属キンミズヒキ
高さ1mほどになる多年草で、花期は7~9月です。

葉は奇数羽状複葉で、小葉は5~7枚です。

花は長い総状花序に密に多数つき、径は8~10mmです。
雄しべは10~20本、雌しべは1本、花柱は2個あります。

秋には赤色に紅葉します。

果実には鉤状のトゲが密生し、動物の体に付着して運ばれます。

シモツケソウ属
オニシモツケ
バラ目バラ科バラ亜科シモツケソウ属オニシモツケ
高さ1~2mの多年草で、花期は7月です。
山地~亜高山のやや湿った場所に生えます。

葉は奇数羽状複葉ですが、側小葉が小さく頂小葉が特大のため単葉に見えます。

頂小葉は掌状に大きく切れ込み、縁には鋸歯があります。

径6~8mmの小さな花が散房状に多数つきます。

花弁とがく片が各5枚、雄しべが多数、雌しべが数個あります。
雄しべは長く、花から突き出ます。


果実は平たく縁に長毛があります。


ダイコンソウ属
ダイコンソウ
バラ目バラ科バラ亜科ダイコンソウ属ダイコンソウ
高さ50cmほどになる多年草で、花期は7~9月です。
林内に生えます。

根出葉は奇数羽状複葉で、粗い鋸歯があります。
この根出葉の様子が大根の葉に似ていることから、ダイコンソウの名前がついたそうです。

茎葉は3出複葉または単葉で、小さな托葉がつきます。


花の径は2cmほどで、花弁、がく片、副がく片が各5枚あります。

雄しべと雌しべは多数あります。

副がく片は小さいです。

茎には毛が密生します。





オオダイコンソウ
バラ目バラ科バラ亜科ダイコンソウ属オオダイコンソウ
高さ60~100cmの多年草で、花期は6~7月です。
ダイコンソウに比べて背が高いです。

茎葉は羽状複葉で、側小葉とほぼ同じ大きさの托葉がつきます。
小葉の先は尖ります。

ミヤマダイコンソウ
バラ目バラ科バラ亜科ダイコンソウ属ミヤマダイコンソウ
高さ30cmほどになる多年草で、花期は6月下旬~8月です。
全体に剛毛が密生します。

茎葉には柄が無く、茎を抱きます。
コキンバイ
バラ目バラ科バラ亜科ダイコンソウ属コキンバイ
高さ15cmほどの多年草で、花期は5~6月です。
山地の林内に生えます。
葉は長い柄のある3出複葉で、縁には鋸歯があります。

葉は全て根生します。

花は茎頂に1~3個つき、径2cmほどです。花弁とがく片は各5枚あり、がく片の間に小さな副がく片があります。


チングルマ属
チングルマ属はダイコンソウ属と非常に近縁であり、ダイコンソウ属に含めるという考え方もあります。
チングルマ
バラ目バラ科バラ亜科チングルマ属チングルマ
高さ10~15cmになる落葉小低木で、花期は6月中旬~7月です。
亜高山~高山の湿地やれき地に生えます。

葉は奇数羽状複葉で、小葉は2~5対です。光沢と鋸歯があり、長さは0.5~1.5cmです。

花は径2.5cmほどで、花弁は5枚、雄しべと雌しべは多数あります。

花弁が散った後、果実に羽毛状になった雌しべが残ります。

キジムシロ属
キジムシロ
バラ目バラ科バラ亜科キジムシロ属キジムシロ
高さ15~25cmになる多年草で、花期は5~7月です。
低地~山地の日当たりの良い場所に生えます。

柄のある長い葉が根茎から出、5~9枚の奇数羽状複葉となります。

茎葉は3~5枚に分かれる複葉です。小葉の縁には鋸歯があります。


茎と葉柄に毛が目立ちます。

花は多数つき、径2cmほどです。花弁は5枚あり、花弁の先はややへこみます。

雄しべと雌しべは多数あります。

がく片と副がく片は各5枚あり、副がく片はやや小さいです。

キジが座るむしろのように、ざぶとん状にひろがることからキジムシロの名前がつきました。

ヒメヘビイチゴ
バラ目バラ科バラ亜科キジムシロ属ヒメヘビイチゴ
茎がつる状になって地面を這う軟弱な多年草で、花期は6~7月です。
林内のやや湿った場所に生えます。

花の径は7mmほどで、花弁が5枚、雄しべと雌しべは多数あります。


がく片と副がく片はそれぞれ5枚あります。副がく片の方が幅が狭く尖っています。(下の写真のがく片副がく片は変異があったようで4枚ですが…)

葉は3出複葉で、明るい緑色です。


ミツモトソウ
バラ目バラ科バラ亜科キジムシロ属ミツモトソウ
高さ50~80cmになる多年草で、花期は7~9月です。
山地の林縁や草地に生えます。

全体に白い毛が生えています。
葉は3出複葉で、下部の葉には長い柄があります。

花は径1.5cmほどで、花弁、がく片、副がく片が各5枚あります。
花弁とがく片は同じ長さです。

水気がある所に生えることから、ミツモトソウ(水源草)と名付けられました。
ミツバツチグリ
バラ目バラ科バラ亜科キジムシロ属ミツバツチグリ
高さ10~30cmになる多年草で、花期は5~6月です。
低地~山地の日当たりの良い場所に生えます。

葉は3つに分かれた複葉で、縁には鋸歯があります。

花は散房状につき、径1~1.5cmです。
花弁、がく片、副がく片が各5枚あり、花弁はがく片より長いです。がく片と副がく片はほぼ同じ長さです。

ツチグリというバラ科植物(愛知県以西に分布)に似ていることから、この名前がついたそうです。
キンロバイ
バラ目バラ科バラ亜科キジムシロ属キンロバイ
亜高山の岩れき地に生える高さ50cm前後になる落葉小低木で、花期は6~8月です。

葉は羽状複葉。小葉は3~5枚でやや厚みがあります。
鋸歯はありません。

花は径2~2.5cmです。
花弁はほぼ円形で先はへこみません。

ミヤマキンバイ
バラ目バラ科バラ亜科キジムシロ属
高山の草地に生える高さ10~20cmの多年草で、花期は6~8月です。

花弁・がく片・副がく片が各5枚あり、雄しべと雌しべは多数あります。
花は径2cmほどで、花弁の先がややへこみます。

メアカンキンバイ
バラ目バラ科バラ亜科キジムシロ属メアカンキンバイ
高山のれき地に生える高さ10cmほどの多年草で、花期は7~8月です。

葉は3出複葉で、白みをおびた緑色です。
小葉の先は3つに切れ込みます。

花は径1cmほどで、花弁・がく片・副がく片が各5枚あります。

ヘビイチゴ属
ヘビイチゴ属はキジムシロ属と非常に近縁であり、キジムシロ属に含めるという考えもあります。
ヘビイチゴ
バラ目バラ科バラ亜科ヘビイチゴ属ヘビイチゴ
茎が地を這って長く伸びる多年草で、花期は5~6月です。

葉は明るい緑色で、3出複葉です。

花の径は1cmほどで、花弁、がく片、副がく片が各5枚あります。
雄しべと雌しべは多数あります。

がく片は葉状の副がく片よりも小さいです。



オランダイチゴ属
オランダイチゴ属はキジムシロ属と非常に近縁であり、キジムシロ属に含めるという考えもあります。
ノウゴウイチゴ
バラ目バラ科バラ亜科オランダイチゴ属ノウゴウイチゴ
高さ10~15cmの多年草で、花期は5月下旬~7月です。
山地~亜高山の陽当たりの良い場所に生えます。

花は径2cmほどで、花弁とがく片は7~8枚です。
雄しべと雌しべは多数あります。

岐阜県の能郷村で発見されたので、ノウゴウイチゴという名前がついたそうです。

熟した果実は食べられます。
クロバナロウゲ属
クロバナロウゲ
バラ目バラ科バラ亜科クロバナロウゲ属クロバナロウゲ
高さ20~70cmになる多年草で、花期は6~8月です。
低地~高地の湿原や水辺に生えます。

葉は羽状複葉で小葉は3~7枚で、長楕円形です。縁には粗い鋸歯があります。


花は径2cmほどで花弁は小さく、がく片の方がかなり大きいです。

がく片の外側には副がく片がつきます。

図鑑によると花弁・がく片・副がく片はそれぞれ5枚とのことですが、6~7枚のものもよく見られます。
すぐ下の写真の花はがく片と副がく片が各6枚あります。

雄しべと雌しべは多数あります。



キイチゴ属
ナワシロイチゴ
バラ目バラ科バラ亜科キイチゴ属ナワシロイチゴ
茎が地面を這って伸び、高さ20~30cmになる落葉低木で、花期は6~7月です。
海岸~丘陵地の砂地や草地に生えます。

花は径2cmほどで、花弁・がく片が各5枚あり、雄しべと雌しべは多数あります。
花の中央部に雌しべ、外側に雌しべがあります。



6月の苗代のころに赤い実が熟し始めることから、ナワシロイチゴの名前がついたそうです。

ホロムイイチゴ
バラ目バラ科バラ亜科キイチゴ属ナワシロイチゴ
地下茎が伸びて所々から地上茎を立て、高さ10~30cmになる雌雄異株の多年草です。
花期は6~7月で、泥炭湿原に生えます。

花は径2cmほどで、花弁は4または5枚です。
雌しべを欠く雄花と、雄しべと雌しべがある両性花があります。


エビガライチゴ
バラ目バラ科バラ亜科キイチゴ属エビガライチゴ
高さ1mほどの落葉低木で、花期は6~7月です。
林縁など明るい場所に生えます。
葉は3出複葉で、裏面は白綿毛が密生して白く、縁には重鋸歯があります。頂小葉が特に大きく切れ込みがあります。

花弁は5枚あり、白に近い淡紅色で平開しません。
果実は赤く熟して食べられます。

ワレモコウ属
バラ亜科の中でも、ワレモコウ属とキンミズヒキ属は特に近い関係にあるとされています。
ワレモコウ属はキンミズヒキ属と違って花弁は無いものの、穂状に花がつくところが似ています。
ナガボノシロワレモコウ
バラ目バラ科バラ亜科ワレモコウ属ナガボノシロワレモコウ
高さ80~140cmの多年草で、花期は8~9月です。
低地~山地の湿った草地に生えます。

花序は円柱形で長さ2~7cm、先が垂れます。

花に花弁は無く、4本の長い雄しべが4枚のがく片の中心から突き出ます。
雌しべは1個です。


長い奇数羽状複葉が根生し、小葉は4~7対あります。


ミヤマワレモコウ
バラ目バラ科バラ亜科ワレモコウ属ミヤマワレモコウ
高さ30~80cmの多年草で、花期は8~9月です。
山地や亜高山の草地に生えます。
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葉は茎の下部に集まり、奇数羽状複葉で、小葉は5~7対あります。

花に花弁は無く、4本の長い雄しべが4枚のがく片の中心から突き出ます。
雌しべは1個あります。
タカネトウチクソウ
バラ目バラ科バラ亜科ワレモコウ属タカネトウチクソウ
高さ40~80cmの多年草で、花期は7月下旬~8月です。
高山の湿った草地やれき地によく群生します。
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長い奇数羽状複葉が根生し、小葉は5~7対あります。

花は穂状に密に多数つきます。
花弁は無く、4本の長い雄しべが4枚のがく片の中心から突き出ます。