単子葉植物の花は基本的に3枚の花弁、3枚のがく片を持っています。
その中でもラン科植物の花は、3枚の花弁の中の1枚が唇弁と呼ばれる特殊な形をしており、3枚のがく片、2枚の側花弁、1枚の唇弁というつくりになっています。
また雄しべと雌しべが合着して、1本のずい柱となっていることも特徴的です。
このような特異な形態から以前はラン科のみで1つの目、ラン目を形成していました。
しかし近年のDNA分析による分類(APG)では、キジカクシ目の1つという位置付けになりました。
キジカクシ目の中でもラン科は初期に分枝したグループだそうです。
ラン科はキク科に次いで大きな科で、世界に約750属26400種以上が存在するとされています。
5亜科に分かれ、そのうち最も大きなのがシュンラン亜科で約520属21000種を含むとされています。
エビネ属
エビネ
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科エビネ属エビネ
高さ20~40cmの多年草で、花期は5~6月です。
低山の明るい林内に生えます。
葉は長楕円形で、長さ15~25cmです。根元に2~3枚つき、枯れずに越冬します。
花は総状に多数つきます。
側花弁2枚とがく片3枚は、狭卵形で緑色をおびた褐色です。唇弁は大きく、先が3深裂し中裂片の先は浅く2裂します。
距は細く長さ8mmほどで後方に伸びます。
北海道においては、渡島半島に自生。環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されています。
エビに似た根(偽球茎)を持つことからエビネの名前が付きました。
サルメンエビネ
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科エビネ属サルメンエビネ
高さ30~50cmになる多年草で、花期は5~6月です。
低地~山地の広葉樹林下に生えます。
葉は長楕円形で2~4枚あり、縦に襞(ひだ)状になっています。葉は緑のまま越冬します。
花は茎の上部にややまばらにつき、3枚のがく片と2枚の側花弁は緑色がかった黄色です。
唇弁は3裂しサルの顔のように赤茶色をしています。
環境省のレッドリストでは、絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
ナツエビネ(オクシリエビネ)
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科エビネ属ナツエビネ
高さ20-40cmの多年草で、花期は8月です。
山地の樹林下に生えます。
葉は狭長楕円形で長さ10~25cmです。平行脈が目立ち、先が尖ります。
花はややまばらに総状に10~20個つきます。
がく片は狭卵形で先が細くなって鋭く尖り、後ろに反り返ります。
側花弁は線形で先が尖り、唇弁は広卵形で3深裂します。
葉の裏に短毛があるのがオクシリエビネ、無いのがナツエビネとされています。この個体の葉の裏にはほんの少し毛があったので、たぶんオクシリエビネではないかと思います。
キンラン属
ギンラン
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科キンラン属ギンラン
高さ20~40cmの多年草で、花期は5~6月です。
低地~山地の林内に生えます。
葉は長さ3~8cmの細長い楕円形で、はっきりとした脈があります。
花弁とがく片は各3枚あり、あまり開きません。
唇弁基部にある距は2mmほど顕著に突き出ます。
花柄の基部の苞は最下のものが葉状で大きいが、花序よりも高くありません。
クゲヌマラン
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科キンラン属クゲヌマラン
高さ20~40cmの多年草で、花期は5~6月です。
ギンランの変種で、低地~山地の林内に生えます。
葉は長さ3~8cmの細長い楕円形で、はっきりした脈があります。
花は5~10個つき、柄の基部の苞は花序よりも高くなることはありません。
花弁とがく片はあまり開かず、唇弁基部にある距はほとんど突き出ません(よく似たギンランは突き出ます)。
ササバギンラン
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科キンラン属ササバギンラン
高さ30~50cmの多年草で、花期は5~6月です。
低地~山地の林内に生えます。
葉は長さ5~15cmの長楕円状披針形で先が尖り、縁と裏面に白毛があります。
花柄基部の苞は下部の1~2枚が大きく葉状で、花序と同じかより高くなります。
唇弁の距ははっきりと下方に突き出ますが、ギンランほどは尖りません。
サイハイラン属
サイハイラン
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科サイハイラン属サイハイラン
高さ30~50cmの多年草で、花期は5月下旬~6月です。
低地~山地の林内に生えます。
笹に似た葉は長さ20~30cmで、3本の縦脈が目立ちます。
ふつう開花後に葉は枯れますが、枯れていない個体も多いです。
花はやや一方に偏って斜め下向きに多数つきます。
3枚のがく片と2枚の側花弁はほぼ同じ大きさで、唇弁がやや短いです。
唇弁は先が3裂し、基部に小さな距があります。
シュンラン属
シュンラン
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科シュンラン属シュンラン
高さ10~25cmの多年草で、花期は4~5月です。
低山の明るい林内に生えます。
常緑で硬い葉が根元に集まってつきます。長さ20~35cm、幅6~10mmの線形で、縁に微鋸歯があってざらつきます。
花は直立し、鱗片葉に被われた花茎にふつう1個つきます。
3枚のがく片は倒披針形で、2枚の側花弁もほぼ同じ形ですがやや短いです。
唇弁はさらに短く、白色で濃赤紫色の斑点があり距はありません。この斑点が、別名ホクロの名前の由来となりました。
早春に咲くランであることから、シュンラン(春蘭)の名前がつきました。
コイチヨウラン属
コイチヨウラン
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科コイチヨウラン属コイチヨウラン
高さ5~15cmの多年草で、花期は7~8月です。
山地~亜高山の樹林下に生えます。
根元に柄のある広卵形で長さ1.5~3cmの葉がつきます。色は暗紫色または濃緑色です。
花は1~数個つき径7mmほどで、横~やや下向きに咲きます。
3枚のがく片は長さ5mmほどで同じ形をしており、2枚の側花弁は小さいです。
唇弁はがく片とほぼ同じ長さで、赤い斑点があります。
カキラン属
カキラン
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科カキラン属カキラン
高さ30~60cmの多年草で、花期は7~8月です。
低地~山地の日当たりの良い湿った場所に生えます。
葉は狭卵形~広披針形で互生し、長さ10cm前後です。縦脈が目立ち、基部は茎を抱きます。
花はややまばらにつき、径1cmほどです。
がく片3枚は、やや褐色~緑色をおびた黄色です。
2枚の側花弁は黄色です。唇弁は白色で、紅紫色の模様があります。
カキランの名前は、花の色が柿色であることから付きました。
エゾスズラン
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科カキラン属エゾスズラン
高さ30~60cmの多年草で、花期は7~8月です。
山地~亜高山の林内~林縁に生えます。
葉は狭卵形~広披針形で互生し、長さ10cm前後です。縦脈が目立ち、基部は茎を抱きます。
茎や葉に褐色の短毛があってざらつきます。
花は総状に20~30個つき、径1.5cmほどです。
がく片と側花弁は長さが1cm前後で、ほぼ同じ形をしています。
唇弁は先端部が卵形で後部が内側に巻いて、内側は暗褐色です。
利尻町で見かけた個体は、側がく片が黄緑色で大きかったです。
シュスラン属
アケボノシュスラン
キジカクシ目ラン科チドリソウ亜科シュスラン属アケボノシュスラン
茎が地面を這って先端部が立ち上がり、高さ5~10cmの多年草です。
花期は8~9月で、山地の樹林下に生えます。
葉はやや密に互生し、葉身はやや厚く光沢があります。
葉の形は楕円形~卵形で長さ2~3cm、葉脈が白い筋となって目立ちます。
花は上部に数個つき、長さ8~10mmです。唇弁は基部が少し膨らみます。
あけぼの色(うすピンク)の花、繻子織のような葉を付けていることからアケボノシュスランの名前が付きました。
ミヤマウズラ
キジカクシ目ラン科チドリソウ亜科シュスラン属ミヤマウズラ
高さ10~20cmの多年草で、花期は8~10月です。
低地~山地の林内に生えます。
葉は下部に集中してつき、広卵形~長卵形で長さ2~4cmです。
葉にウズラの卵の模様ような白い斑が入る個体と入らない個体があります。
この個体は斑がありませんでした。
花は一方に偏ってつき、長さ1cm前後です。
がく片や子房、花軸、唇弁内側に毛があります。
2枚の側がく片は披針形で、横に大きく開きます。
クモキリソウ属
クモキリソウ
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科クモキリソウ属クモキリソウ
高さは15~25cmの多年草で、花期は6~7月です。
山地の樹林下や草地に生えます。
地表の偽球茎から2枚の葉と花茎を出します。
葉は長~広楕円形で、長さ6~10cmです。葉の縁は細かく波打ちます。
花は5~15個つきます。
がく片は細い筒状となり、長さ8mmほどです。
唇弁は幅6mmほどあり、中ほどで下に巻き込みます。
側花弁はがく片よりも細く線形で、下垂します。
コケイラン属
コケイラン
キジカクシ目ラン科シュンラン亜科コケイラン属コケイラン
高さ30~40cmの多年草で、花期は6~7月です。
山地の林内のやや湿った場所に生えます。
葉は偽球茎から2枚出て、長さ25cm幅2cmほどです。枯れずに越冬し、翌年の春に枯れます。
花序は10~20cmで、多数の花をつけます。
花は長さ8mmほどで、がく片3枚と側花弁2枚は披針形です。
側花弁は黄色、がく片は褐色がかった黄色です。
唇弁は白色で、紅紫色の斑点があります。