サクラソウ科の植物は、世界に約53属2500種ほどあるとされています。
近年の分子系統解析の結果(APGⅢ以来)、それまで独立していたヤブコウジ科もサクラソウ科に亜科として含まれることとなり、大きな科となりました。
鉢植えとして栽培されるシクラメンやマンリョウは、サクラソウ科ヤブコウジ亜科の植物です。
日本には10属、北海道内には5属のサクラソウ科植物が自生しています。
サクラソウ属
オオサクラソウ
サクラソウ科サクラソウ亜科サクラソウ属オオサクラソウ
高さ20~40cmになる多年草で、花期は5~6月です。
低山の明るい林内に生えます。
花は茎頂に数個、時に2段になってつきます。
花冠は径2cm前後で5深裂して裂片はさらに2浅裂します。
花柱(めしべ)が雄しべよりも長い長花柱花と、花柱が雄しべより短い短花柱花があります。
短花柱花 おしべは5本
長花柱花 めしべは1本
がくも5裂します
葉は数枚が根生し、長い柄があります。
葉身は円心形で7~9の浅い切れ込みがあり、裂片に不規則な鋸歯があります。
エゾコザクラ
サクラソウ科サクラソウ亜科サクラソウ属エゾコザクラ
高さ10~20cmになる多年草で、花期は7~8月です。
高山の湿った草地、雪田や雪渓の融雪跡に生えます。
花は3~10個つきます。花冠は5裂し径2~2.5cmです。
短花柱花と長花柱花の2型があります。
葉は根元に集まりやや多肉質です。
長さ1.5~5cmのくさび型で、上半分に目立つ鋸歯があります。
エゾコザクラの葉
クリンソウ
サクラソウ科サクラソウ亜科サクラソウ属クリンソウ
高さ40~70cmになる多年草で、花期は5月下旬~7月です。
低地~山地の湿った場所や沢沿いに生えます。
花は茎の上部に3~7段、数個が輪生状につきます。
クリンソウ(九輪草)の名前は、この花のつき方からきたそうです。
花冠は径2~2.5cmで、5深裂し裂片の先は2浅裂します。
クリンソウの花
葉は根元に集まり、葉身は15~40cmのへら形です。
質は薄く表面にしわがあり、先が円く縁には鋸歯があります。
コナスビ属(オカトラノオ属)
コナスビ
サクラソウ科ヤブコウジ亜科コナスビ属コナスビ
茎の長さが20cmほどになる多年草で、地面を這い上部が斜上します。
花期は6~7月で、林内や道端に生えます。
全体に軟毛が多いです。
花冠の径は1cmほどで先が5裂します。
がくも5裂し、雄しべが5本、雌しべが1本あります。
葉は三角状卵形で鋸歯は無く、対生します。
果実は径5mmほどで、ナスの形に似ることからコナスビの名前がついたそうです。
オカトラノオ
サクラソウ科ヤブコウジ亜科コナスビ属オカトラノオ
高さ1m前後になる多年草で、花期は7~8月です。
低地~低山の明るい場所に生え、地中に地下茎を伸ばして群生します。
花は茎の一方に偏って総状に多数つき、花序の上部は弓なりに曲がります。
花冠は径1cmほどで、花弁状に5裂します。
雄しべが5本、雌しべが1本あります。
花柄の基部に線形の苞がつきます。
葉は長楕円形で長さ7~12cmです。
鋸歯は無く両端がとがり、互生します。
クサレダマ
サクラソウ科ヤブコウジ亜科コナスビ属クサレダマ
高さ40~80cmになる多年草で、花期は7月下旬~8月です。
湿った草地に生え、根茎が伸びてやや群生します。
花は茎の上部に円錐状に多数つきます。
花冠の径は1cmほどで、5深裂します。
雄しべが5本、雌しべが1本あります。
葉は長楕円形で、長さ10cmほどです。
ふつう2~4枚が輪生しますが、ときに互生します。
レダマというマメ科木本植物に似ており、草本であることから、クサレダマの名前がついたそうです。
ツマトリソウ
ツマトリソウをツマトリソウ属としてコナスビ属から分ける見解もあります。
サクラソウ科ヤブコウジ亜科コナスビ属ツマトリソウ
高さ7~20cmの多年草で、花期は6~7月です。
山地~亜高山の林縁などに生えます。
花は葉腋から出る1~2本の柄につきます。
花冠は普通7裂して径1.5~2cmですが、上の写真のように8裂することもあります。
雄しべも通常7本です。
湿原に生え、葉が短く先がとがらずに花冠の長さが1.2cmほどの型を変種コツマトリソウといいます。
コツマトリソウの特徴を個体差の違いとし、ツマトリソウと分けない見解もあります。
中間型の個体もあり、見分けるのはやや難しいです。
ツマトリソウの名前の由来となった、花の縁が赤くつまどられる個体は少ないです。
ヤブコウジ属
ヤブコウジ
サクラソウ科ヤブコウジ亜科ヤブコウジ属ヤブコウジ
高さ10~15cmになる常緑の小低木で、花期は8月です。
低地~低山の林内に生え、北海道では檜山地方と焼尻島に分布します。
葉は厚く硬くやや光沢があり、長さ3~4cmの長楕円形です。
縁には鋸歯があり、基部はくさび形です。
茎の上部に2~3段の輪生状に集まってつきます。
花は下向きに数個つき、花冠の先が5裂して径・長さともに5mmほどです。
果実は球形で径5mmほどで、10月頃赤く熟します。