スミレ科の植物は世界に34属約1000種あるとされています。
このうち400種ほどが草本で残りが木本となり、科全体の中では木本の方が多いそうです。
日本に自生するのはスミレ属のものだけで、すべて草本植物です。
国内に50種ほど自生するとされていますが変異が多く、変種や品種も含めると250種ほどあるそうです。
北海道にも30種類以上のスミレが自生しています。
ところで、スミレ科が属するキントラノオ目の中にはヤナギ科も含まれているのですが、このヤナギ科とスミレ科、DNA分析の結果けっこう近い関係にあることがわかったそうです。
参考図書 「新維管束植物分類表」米倉浩司 「新北海道の花」梅沢俊 ほか

スミレ属
スミレ属の花の特徴は、5枚の花弁のうち下側の1枚が後ろにのび、距(きょ)という袋を作っていることです。
距の中には2本の雄しべの一部が変形した蜜腺があり、蜜が溜まっています。
ナガハシスミレ
キントラノオ目スミレ科スミレ属ナガハシスミレ
高さ10~20cmになる地上茎のあるスミレで、花期は4月下旬~5月です。

別名テングスミレともいい、長い距(花の後ろの出っ張り)が特徴です。
距の長さは2cmくらいあります。

雪国のスミレで、北海道~中国地方の積雪の多い場所に分布しています。
分布は積雪量100cmラインの範囲内とほぼ一致するそうです。

葉は長さ2~5cmの心形で、やや厚く光沢があります。
花柄は葉腋と根元から出ます。

ミヤマスミレ
キントラノオ目スミレ科スミレ属ミヤマスミレ
高さ3~10cmの背の低いスミレで、花期は4月下旬~5月です。
地上茎は無く、地下茎が伸びて群生していることが多いです。

北海道全域、本州では東北地方を中心に分布しています。
落葉樹の林内や林縁で、腐葉土のたまるような場所に生えます。

葉は長さ2~4cmの心形で薄く、明るい緑色です。粗い鋸歯が目立ちます。

フイリミヤマスミレ
キントラノオ目スミレ科スミレ属フイリミヤマスミレ
ミヤマスミレの1品種で、葉の表面葉脈に沿って白い斑が入る型のものです。

針葉樹林下で見ることが多い品種です。

スミレサイシン
キントラノオ目スミレ科スミレ属スミレサイシン
高さ5~15cmになるスミレで、花期は4月下旬~5月です。
雪国のスミレで北海道石狩地方~本州山口県の日本海側に分布しています。

山地の湿った林内に生えます。

葉は先が細く尖った心形で、長さ5~8cmです。スミレの中で最大の葉を持っています。


距(花の後ろの出っ張り)が短く太いのも特徴です。


別の植物「ウスバサイシン」に葉の形が似ていることから、スミレサイシンの名前がついたそうです。
タチツボスミレ
キントラノオ目スミレ科スミレ属タチツボスミレ
高さ5~15cmになる地上茎のあるスミレで、花期は4月下旬~6月です。
地下茎があるスミレで、低地~山地の明るくやや乾いた場所に生えます。


花柄は葉腋と根元から出ます。
葉は長さ2~4cmの心形で、葉柄基部に櫛歯状に裂けた托葉があります。

よく似たミヤマスミレとは、この櫛歯状に裂けた托葉があることで区別できます。

花は径1.5~2cmで、側花弁内側に毛はありません。

距はやや細く、長さ5~8mmで紫色です。

小苞葉が花柄上部につきます。

タチツボスミレの「ツボ」は古語で「庭」のことで、庭に咲くスミレの意味です。
オオタチツボスミレ
キントラノオ目スミレ科スミレ属オオタチツボスミレ
高さ15~25cmになるスミレで、花期は4月下旬~6月です。
北海道全域、本州でも日本海側を中心に分布しているスミレです。

花柄が茎頂や葉腋から出て、根元からは出ていないのが特徴です。

距(花の後ろの出っ張り)が白く太いです。


葉は柔らかく、丸みを帯びた心形です。

撮影地:奥尻町
ツボスミレ(ニョイスミレ)
キントラノオ目スミレ科スミレ属ツボスミレ
高さ5~20cmになる地上茎のあるスミレで、花期は5月下旬~6月です。

葉は心形で基部は広く湾入し、長さより横幅の方がやや大きいです。

距は短く、半球形状です。
葉には長さ1cm位の托葉がつき、ほとんど全縁です(タチツボスミレのように切れ込みません)。

オオバキスミレ
キントラノオ目スミレ科スミレ属オオバキスミレ
高さ5~20cmになるスミレで、花期は5~6月です。
関西以北の日本海側に分布します。
林内や林縁のやや湿った場所に生えます。

葉は3~4枚で、一番下の葉が離れてつきます。柔らかく、心形で先が尖ります。

地下茎や種子で増え、群生することも多いです。
フギレオオバキスミレ
キントラノオ目スミレ科スミレ属ヒギレオオバスミレ
北海道西部の山地に見られるオオバキスミレの変種で、葉が不規則に切れ込みます。
花期は6~7月で山地~亜高山の草地に生えます。

花の側弁基部に毛が生えることも特徴です。

地下茎と種子で増え、よく群生します。

オオバタチツボスミレ
キントラノオ目スミレ科スミレ属オオバタチツボスミレ
高さ30cmほどのスミレで、花期は5~7月です。
低地~山地の湿地や湿原に生えます。

花の側弁基部に、白い毛が密生することが特徴です。

葉は心形で、長さ3~7cmと大きめです。
葉につく托葉は大きく、披針形で切れ込みはありません。

ヒカゲスミレ
キントラノオ目スミレ科スミレ属ヒカゲスミレ
高さ6~12cmの多年草で、花期は4~5月です。
山地の樹林内に生える白いスミレで、北海道では太平洋側に分布します。

地下茎を伸ばして群生することが多いです。

花柄や葉柄、葉に毛が多いです。

葉は長卵形~長三角形で基部は心形です。

花は径2cmほどで、基部に紫色の筋が入ります。普通側弁基部に毛があります。

距は太くて長く、長さ7~8mmです。


ヒナスミレ
キントラノオ目スミレ科スミレ属ヒナスミレ
高さ3~8cmの多年草で、花期は4~5月です。低地~山地の明るい林下に生えます。
道内では主に太平洋側に分布します。


葉は長さ3~6cmの三角状卵心形~長卵形で、先が尖ります。

葉柄が長く、葉身の倍くらいあります。

花は径1.5~2cmで、側花弁基部にはまばらに毛があります。

距はやや太くて長いです。

アメリカスミレサイシン(帰)
キントラノオ目スミレ科スミレ属アメリカスミレサイシン
急速に分布域を広げているとされる北アメリカ原産の帰化植物です。以前はパピリオナケアあるいはドイツスミレなどと呼ばれていましたが、アメリカスミレサイシンの名で統一されたそうです。

葉は卵形で基部は心形となり先は尖ります。

花は濃い青紫色で、側弁基部には長い毛が密生します。

距は太くて短いです。

地下茎が太くスミレサイシンに似ることから、アメリカスミレサイシンの名前がついたそうです。
コメント