ユキノシタ科の植物は、世界に33属約600種あるとされています。
このうち日本に自生するのは、ユキノシタ属、チダケサシ属、アラシグサ属、ネコノメソウ属、イワユキノシタ属、チャルメルソウ属、ヤワタソウ属、ヤグルマソウ属、ズダヤクシュ属のものになります。
以前はもっと多くの植物がユキノシタ科に含まれていましたが、DNA解析を基にした新分類(APGⅢ)によって大分裂が起こりました。
かつてユキノシタ科だったスグリ属はユキノシタ目スグリ科に、タコノアシ属はユキノシタ目タコノアシ科に、アジサイ属はミズキ目アジサイ科に、ウメバチソウ属はニシキギ目ニシキギ科に異動しました。
それでもスグリ科とユキノシタ科はかなり近い関係にはあるそうです。
花弁が5枚の草本が多いですが、ネコノメソウ属のように花弁の無いものもあります。
見た目でユキノシタ科を特徴づける、際立った形質というものは無いようです。
ユキノシタ属
ユキノシタ
ユキノシタ目ユキノシタ科ユキノシタ属ユキノシタ
高さ20~50cmの多年草で、花期は6~7月です。
葉は根生して長い柄があり、腎円形でへりは浅く裂けます。葉の表面には葉脈に沿って灰白色の斑が這います。
5枚の花弁は上の3枚が短く下の2枚が長いです。
この下2枚の花弁を舌に見立てて「雪の舌」とう名前がついたという説もあります。
がく片は5枚、雄しべは10本、雌しべは1本、雌しべの花柱は2個あります。
ダイモンジソウ
ユキノシタ目ユキノシタ科ユキノシタ属ダイモンジソウ
高さ5~40cmの多年草で、花期は7~10月です。
葉は根生して長い柄があり、腎円形でへりは浅く裂けます。
5枚の花弁は上の3枚が短く下の2枚が長く、漢字の「大」の字のようになります。
がく片は5枚、雄しべは10本、雌しべは1本、雌しべの花柱は2個あります。
北海道に自生するこのほかのユキノシタ属の植物は、エゾノクロクモソウ、キヨシソウ、クモマユキノシタ、フキユキノシタ、シコタンソウ、チシマクモマグサ、ヤマハナソウです。
チダケサシ属
トリアシショウマ
ユキノシタ目ユキノシタ科チダケサシ属トリアシショウマ
高さ40~100cmの多年草で、花期は7~8月です。
花序は二重の円錐状となり、密生して多数の花がつきます。
花序は二重の円錐状となり腺毛が密生して多数の花がつきます。
花にはへら形で長さ5mmほどの花弁が5枚あります。
がく片は5裂し、雄しべは5本、雌しべは1本で花柱は2個です。
葉は3回3出羽状複葉で、縁は重鋸歯となり、先はとがります。
トリアシショウマとヤマブキショウマの違い
バラ科のヤマブキショウマとトリアシショウマは、花や葉の形態がよく似ています。
違いとしては、ヤマブキショウマの花はトリアシショウマほどは密生しておらず、花序も円錐状ではありません。
またヤマブキショウマの葉の葉脈は、トリアシショウマのものに比べて直線的です。
北海道に自生するトリアシショウマ以外のチダケサシ属の植物は、モミジバショウマになります。
ネコノメソウ属
チシマネコノメソウ
ユキノシタ目ユキノシタ科ネコノメソウ属チシマネコノメソウ
高さ20cm前後の多年草で、花期は4月下旬~6月です。
山地の谷筋など湿った場所に生えます。
全体がほぼ無毛で、茎に長毛が生える近似種マルバネコノメソウと見分けます。
根元にロゼット葉があり、花時も残ります。茎葉は1対つくか、つきません。
花は卵形の苞葉に囲まれてつきます。
花弁は無く、がく片は4個、雄しべは8本、雌しべは1本で雌しべの花柱は1個です。
マルバネコノメソウ
ユキノシタ目ユキノシタ科ネコノメソウ属マルバネコノメソウ
高さ15cmほどになる多年草で、花期は5~6月です。
山地の湿った場所に生えます。
花時、ふつう根出葉は枯れており扇形の茎葉が対生します。
茎には長毛がまばらに生えます。
花の径は3mmほどで花弁は無く、がく片が4個、雄しべが8個あります。
ヤマネコノメソウ
ユキノシタ目ユキノシタ科ネコノメソウ属ヤマネコノメソウ
高さ10~20cmの多年草で、花期は4~5月です。
低地~山地の湿った林内に生え、北海道では道南に分布しています。
走茎枝は出さず、茎葉は1~2枚で互生します。
根出葉は長い柄を持つ円腎形です。幅1~2cmで、縁には浅い鋸歯があり基部は心形です。
花は径5mmほどで、黄緑色のがく片が4枚あります。
雄しべは8個(時に4個)、雌しべの花柱は2個あります。
花が終わり、果実が膨らんできている様子です↓
果実が熟すると緑色のピーナッツのようになります。やがてピーナッツの上部が裂け、中から茶色の種子が顔を出します。
ズダヤクシュ属
ズダヤクシュ
ユキノシタ目ユキノシタ科ズダヤクシュ属ズダヤクシュ
高さ10~40cmの多年草で、花期は5月下旬~7月です。
山地~亜高山の樹林下に生えます。
花は径3mmほどの大きさで、がく片が5裂して花弁状になります。
花弁は糸状でがく片より長く、5本あります(ピンク矢印先)。
雄しべは10本、雌しべは1本あります。
信州で喘息の薬としていたことから、ズダヤクシュ(喘息薬種)の名前がついたそうです。