ギンリョウソウの仲間は、旧分類ではイチヤクソウの仲間と共にイチヤクソウ科を作っていましたが、APG分類体系ではツツジ科に含まれるようになりました。
もともとツツジ科にあったドウダンツツジの仲間が、イチヤクソウやギンリョウソウよりも早く他のツツジの仲間から分枝した群だということがわかったからです。

ギンリョウ亜科の植物は世界の温帯~熱帯に分布し、約10属15種あるとされています。
腐生植物で緑色の葉を持たず、体全体が白色や淡い黄色なのが特徴です。
日本にはギンリョウソウ、ギンリョウソウモドキ、シャクジョウソウの3属(2属という見解も)3種が自生しており、北海道内にもこの3種が自生します。
参考図書 「新維管束植物分類表」米倉浩司 「新北海道の花」梅沢俊 ほか
ギンリョウソウ属
ギンリョウソウ
ツツジ科ギンリョウソウ亜科ギンリョウソウ属ギンリョウソウ
高さ8~15cmの菌寄生植物で、花期は6~7月です。
葉緑素を持たず、葉も茎も白色で銀色の竜に似ていることからその名前が付きました。

ギンリョウソウの根は菌類と共生していて、菌根と呼ばれる根になっています。ギンリョウソウは自ら光合成をしない代わりに、菌根で菌類から栄養を奪って生活しています
北海道の道南地方では、毎年6月になると土の中から姿を現します。

ギンリョウソウは種が発芽してから地上に姿を現すまで、何年も地下生活を送っているらしいです。

下の写真のように集団で出現することもよくあります。

太陽の光では無く菌根からエネルギーを得ているギンリョウソウは、暗い樹林の下でも生きていけます。

林床の暗い場所に佇むギンリョウソウ。こんな光景を見ると、別名のユウレイタケという名前を思い出します。

「ムーミン」に出てくる謎の生物ニョロニョロにも似ています。もしかしてあの生物のモデルなのかもしれません。

ギンリョウソウは広葉樹林にも針葉樹林にも生えてきます。下の写真は針葉樹林内のギンリョウソウです(落ち葉の違いに注目)。

ギンリョウソウにも葉はありますが退化していて、気孔も柵状組織も海綿状組織も無い単純なつくりになっているそうです。

花は茎上に1個つき、長さ2cm前後です。葉と同形のがく片が2~3枚、花弁が3~5枚あります。
紫色の柱頭が大きい雌しべが1本、葯が黄色の雄しべが10本前後あります。

花は蜜を出していて、ハナバチが訪問するのを待っています。ギンリョウソウの体全体が白いのは、ハチに発見してもらいやすくなるためだともいわれています。

花の時期が終わると花被片は脱落し、残された子房は上を向きます。雄しべは放射状に広がりますが、間もなく脱落します。

やがて白い子房(果実になる部分)だけを残し、他の部分は黒くなって溶けてしまします。

果実は液果で、種子は森に住むゴキブリの仲間が散布しているそうです。

このようにギンリョウソウを見ることができるのは、わずか1ヶ月ほどです。
一方同じ亜科のギンリョウソウモドキ属ギンリョウソウモドキは、下の写真のように立ち枯れたまま越冬し、果実は蒴果です。

参考図書:Newtonムック 植物の世界 草本編(上)
シャクジョウソウ属
シャクジョウソウ
ツツジ科ギンリョウソウ亜科シャクジョウソウ属シャクジョウソウ
高さ10~20cmになる多年生の菌根植物で、花期は7~8月です。
葉緑素を持たず、全体が淡黄褐色です。

山地の樹林下、やや暗く湿った場所に生えます。


茎には鱗片状に退化した葉が互生します。

茎の先端の総状花序に、数個~10個の花を下向きにつけます。

花冠は鐘形で長さ1.3cmほどです。がく片と花弁は各4~5枚あります。

がく片の外側には剛毛が生えます。


花は下向きにつきますが、次第に上向きになります。




果実は蒴果で上を向きます。ギンリョウソウモドキと同じく、立ち枯れたまま越冬します。


シャクジョウ(錫杖)とは僧侶が持つ杖のような道具のことで、このシャクジョウに似ていることからシャクジョウソウの名前がついたそうです。