キジカクシ科の植物は、世界に110~120属2400~3000種あるとされています。日本には12属が分布します。
分子系統解析による新分類(APG)では、旧分類でユリ科だった植物が数多くキジカクシ科に異動しました。マイヅルソウ、スズラン、ギボウシ、アマドコロなどです。
キジカクシという名前にはあまり馴染みが無いですが、野菜のアスパラガスは別名オランダキジカクシと呼ばれ、北海道にもキジカクシという植物が自生しています。
観賞用として栽培されるオリヅルランやオモト、ヒアシンス、ムスカリなども、キジカクシ科の植物です。
参考図書 「新維管束植物分類表」米倉浩司 「新北海道の花」梅沢俊 ほか
キジカクシ属
キジカクシ
キジカクシ目キジカクシ科キジカクシ亜科キジカクシ属キジカクシ
高さ40~100cmの雌雄異株の多年草で、花期は6~7月上旬です。
低山の林縁や草地に生えます。

葉は膜質の小さな鱗片状です。
葉に見えるものは枝が細かく分枝したもので、偽葉または葉状枝と呼ばれています。
下の写真は偽葉が開いた様子です。この葉で鳥のキジを隠せるという意味で、キジカクシの名前が付いたとされています。

偽葉は3~7個束になってつき、長さ1~2cmです。

花は偽葉腋に数個付きます。(下の写真のピンク矢印の先がつぼみです。)

花は径5mmほどで、花被片は6枚です。下の写真は雌花だと思われます。


スズラン属
スズラン
キジカクシ目キジカクシ科トックリラン亜科スズラン属スズラン
高さ20-35cmの多年草で、花期は5月中旬~6月です。野山の明るい所に生えます。
根元から花茎とは別に長さ10-20cmの葉が2枚出ます。柄は無く基部は鞘状になり、互いに抱いています。

花は径8mmほどで、先は浅く6裂します。

ギボウシ属
タチギボウシ
キジカクシ目キジカクシ科リュウゼツラン亜科ギボウシ属タチギボウシ
高さ40-100cmの多年草で、花期は7~8月です。
低地~亜高山の湿原や草地に生えます。

葉は根生して、斜めに立ちます。


葉身は長さ15~30cmの披針形~長楕円形で、基部は次第に細くなります。凹んだ葉脈が目立ち、縁がやや波打ちます。

苞に抱かれた花は径5cmほどで、6枚の花被片が基部で合着しています。


つぼみの形を橋のらんかんにつける玉飾り・擬宝珠に見立てたことから、ギボウシの名前がついたとされています。下の写真の頂上のつぼみの様子が擬宝珠に似ている気がします。


マイヅルソウ属
マイヅルソウ
キジカクシ目キジカクシ科トックリラン亜科マイヅルソウ属マイヅルソウ
高さ10-25cmの多年草で、花期は5-6月です。地下茎を伸ばして群生します。
低山~亜高山の林内や草地に生えます。

花茎にふつう2枚の葉がつきます。葉身は長さ3~10cmの長い心形で、上の葉が小さいです。

花は総状花序に20個ほどつきます。径5mmほどで、花被片は4枚です。


雄しべは4本、雌しべは1本あります。


果実は径5-8mmの球形で、まだら模様から赤色に熟していきます。



ユキザサ
キジカクシ目キジカクシ科トックリラン亜科マイヅルソウ属ユキザサ
茎の上部が斜上して長さ30~50cmになる多年草で、花期は5~6月です。
山地の林内に生えます。

長さ6~15cmの笹のような葉が4~7枚互生します。

茎があずき色をしていることから、アズキナと呼ばれることもあります。

花は粗い毛が密生する円錐花序に多数つき、径9mmほどです。

花被片は6枚…と図鑑には書いてありますが、この写真のように5枚のこともあるようです。

雄しべも通常6個あります。




果実は球形で、赤く熟します。

アマドコロ属(ナルコユリ属)
オオアマドコロ
キジカクシ目キジカクシ科トックリラン亜科アマドコロ属オオアマドコロ
茎が斜上して長さ60-100cmになる多年草で、花期は5月中旬~6月です。
山地の林縁や草地に生えます。


葉は長さ10~20cmの楕円形で柄は無く、先は尖ります。

茎には顕著な稜があります。

花は2-4個葉腋から下垂し、筒形で長さ2.5cmほどで6つに浅く裂けています。

花が開いた様子です。葉腋に付いている花が1つなのは、1つが取れたためだと思われます。(上部には2つずつ花が付いていました。)

ヒメイズイ
キジカクシ目キジカクシ科トックリラン亜科アマドコロ属ヒメイズイ
高さ15~40cmの多年草で、花期は6~7月です。
海岸や山地の草原に生えます。

地下に根茎が走りまとまって生えます。茎は直立して稜があります。
葉は長さ4~7cmの楕円形~楕円状披針形です。

花は葉腋から1個ずつ下垂し、長さは15-18mmほどで6つに浅く裂けます。

ミヤマナルコユリ
キジカクシ目キジカクシ科トックリラン亜科アマドコロ属ミヤマナルコユリ
茎が斜上して地表と平行に伸び、長さが30~60cmになる多年草です。
花期は6月で、山地の広葉樹林内に生えます。

葉は長さ7~10cmの広~長楕円形で、先が尖り縁が波打ちます。


花は節から分枝した柄に2~4個ぶら下がってつきます。

花は長さ2cmの筒形で、先が緑色をおびて浅く6裂します。

雄しべは6本、雌しべは1本あります。花の内側と雄しべの花糸に白毛が密生します。

ヤブラン属
ヒメヤブラン
キジカクシ目キジカクシ科トックリラン亜科ヤブラン属ヒメヤブラン
高さ5-15cmの常緑の多年草で、花期は7~8月です。
海岸近くの草地に生えます。横に伸びる地下茎があり、群生します。

葉は細い線形で全て根生し、幅3mmほどです。

花は径1cmほどで花被片は6枚あり、基部で合着します。

雌しべは1本あり、曲がって上を向きます。

雄しべは6本あります。

葉が細い線形で、ランの葉に似ていることからヤブランの名前が付きました。