オオバコ科の植物は、世界に約100属1900種あるとされています。
かつてオオバコ科は小さな科でしたが、近年のDNA分析に基づいたAPG分類体系では多数の科から多くの種が異動してきました。
身近な植物で言えば、ゴマノハグサ科だったクワガタソウ属(イヌフグリの仲間)が加わりました。
風媒花である地味なオオバコと、美しい花を咲かるクワガタソウが、系統的に近かったことは興味深い驚きです。
イワブクロ属
イワブクロ
シソ目オオバコ科イワブクロ属イワブクロ
高さ10~20cmの多年草で、花期は6月中旬~8月です。
高山のれき地や岩場に生えます。
花は茎の上部にまとまって横向きにつきます。
花冠は長さ2.5cmほどで外側に長毛があり、筒状で先は5裂(上唇2裂、下唇3裂)します。
花序とがくに白い長毛が密生します。
葉は対生し、葉身は長さ4~7cmの卵状長楕円形で厚みがあります。縁には鋸歯があります。
オオバコ属
オオバコ
シソ目オオバコ科オオバコ属オオバコ
高さ10~30cmの多年草で、花期は6~9月です。
道端や空き地などに生え、下の写真のようにコンクリートの隙間にも生えます。
花は穂状に密に多数つき、1個の苞と4個のがく片に包まれ下から咲き上がります。
まず柱頭がつき出て風媒で受粉後に、雄しべ5本が出て花冠裂片が反り返るように開きます。
葉は長さ4~20cmの卵形で、つやがあります。縁にはふつう鋸歯はありませんが、時に不整の鋸歯が出たり波を打ったりします。
オオバコとは大葉子と書き、大きな葉という意味です。
ヘラオオバコ
シソ目オオバコ科オオバコ属ヘラオオバコ
高さ30~60cmの多年草で、花期は5~8月です。
ヨーロッパ原産の帰化植物で、道端や空き地に生えます。
花序は長さ3~5cmの短い円柱形で、多数の花が密につきます。白色~クリーム色の葯が目立ちます。
花は下から咲き上がり、雌しべが出た後に花糸の長い4本の雄しべが水平につき出ます。
葉はへら形で長さ10~20cmです。先が尖り、基部が次第に細くなって柄に移行します。
葉の脈状と柄には長毛があります。
クワガタソウ属
エゾヒメクワガタ
シソ目オオバコ科クワガタソウ属エゾヒメクワガタ
高さ5~20cmの多年草で、花期は7~8月です。
高山の草地に生えます。
茎は直立して株立ちとなり、白い軟毛があります。
葉は対生し、葉身は長さ1~3cmの広卵形で両面に毛があり、縁には鋸歯があります。
花は茎の上部にまとまってつき、花冠は花弁状に4裂して径1cmほどです。
花色は白色~淡紅色~青紫色と様々です。
雄しべは2本、雌しべが1本あります。雄しべより花柱(雌しべ)が長く、5~7mmあります。
実の形が兜(かぶと)の飾りである「くわ形」に似ていることから、クワガタソウの名前がついたそうです。
オオイヌフグリ
シソ目オオバコ科クワガタソウ属オオイヌフグリ
茎の長さ20~40cmの1~2年草で、花期は4~7月です。
西アジア原産の帰化植物で、道端や空き地などに生えます。
葉は長さ1~2cmの卵円形で鋸歯があり、下部で対生、上部で互生します。
茎には軟毛があります。
花は径8mmほどで上部の葉腋に1個ずつつき、花冠は4深裂します。
雄しべは2本、雌しべは1本あります。
花の柄は2~3cmと長く、葉より上に出て咲きます。
タチイヌフグリ
シソ目オオバコ科クワガタソウ属タチイヌフグリ
高さ10~25cmの1~2年草で、花期は5~7月です。
ヨーロッパ原産の帰化植物で、道端や空き地に生えます。
茎は直立して毛があります。
葉は下部で対生し柄があって、上部で互生し無柄となります。
上部の葉腋に、柄の無い小さな花がつきます。
花冠は花弁状に4深裂し、径4mmほどで下の1裂片が小さいです。
雄しべが2本、雌しべが1本あります。
ヒヨクソウ
シソ目オオバコ科クワガタソウ属ヒヨクソウ
高さ25~70cmの多年草で、花期は6月下旬~7月です。
山地の明るい場所に生えます。
葉は極めて短い柄で対生し、長さ2~3cmの卵形で、先が尖ります。
軟毛が密生して、縁に鋸歯があります。
葉腋から花序が上部が開いたU字形に対生します。
花冠は花弁状に4深裂し、径6~8mmです。
雄しべが2本、雌しべは1本あります。
対生する長い花序の形から、ヒヨクヨウ(比翼草)の名前がつきました。