シソ科の植物は、世界に約240属6800種あるとされています。
シソやハッカ、バジル、ラベンダーなどのハーブ類のほか、ムラサキシキブ、サルビアなど観賞用に栽培される種も多くあり、有用植物が多く含まれる科です。
芳香があるものが多く、茎が四角く葉が対生するのが特徴です。雄しべが4本あり、果実は4個になります。
ムラサキシキブ亜科
ムラサキシキブ属
ムラサキシキブ
シソ目シソ科ムラサキシキブ亜科ムラサキシキブ属ムラサキシキブ
高さ1.5~3mの落葉低木で、花期は7~8月です。
低山の林内に生えます。
葉は対生します。薄く、長さ6~12cmの倒卵形~卵形で先が尖ります。
葉の縁には鋸歯があり、裏面には黄色い腺点が多数あります。
花は枝先や葉腋から出る花序につきます。
花冠は4深裂して、径5mmほどです。
雄しべ4本と雌しべ1本が、花冠から突き出ます。
果実は径3mmほどの球形で、紫色に熟します。
冬芽は裸芽です。紡錘形~長卵形で、先は尖ります。
シソ亜科
クルマバナ属
クルマバナ属の花の特徴は、花冠が2唇形で上唇が2裂、下唇が3裂することです。がく片は5裂します。雄しべは4本、雌しべは1本あります。
クルマバナ
シソ目シソ科シソ亜科クルマバナ属クルマバナ
高さ30~70cmの多年草で、花期は7~9月です。
山地の道端などに生えます。
葉は対生し、長さ4~6cmの長卵形で縁に浅い鋸歯があります。
花は段を作って輪生状につき、柄より長い線形の苞があります。
がくは5裂して、裂片の先は褐色をおびます。
花冠は長さ1cmほどで、下唇は大きく3裂します。
ヤマクルマバナ
シソ目シソ科シソ亜科クルマバナ属ヤマクルマバナ
高さ20~70cmの多年草で、花期は8~10月上旬です。
クルマバナの変種で、山地の道端や原野に生えます。
葉は対生し、長さ4~6cmの長卵形で縁に浅い鋸歯があります。
花は段を作って輪生状につき、柄より長い線形の苞があります。
花冠は長さ1cmほどで2唇形、下唇は3裂します。
がくには長毛が生えます。
クルマバナとの違いは、花冠の色が白色に近いことと、がく片の色が緑色で毛が目立つことです。
ミヤマトウバナ
シソ目シソ科シソ亜科クルマバナ属ミヤマトウバナ
高さ30~70cmの多年草で、花期は7~8月です。
低地~亜高山の林内に生えます。
葉は長さ3~6cmで、下部が卵形~広卵形、上部が狭卵形です。縁には粗い鋸歯があります。
茎頂と葉腋に花序がつき、数段輪生状となります。
がくは筒状の鐘型で、短毛が生えます。
花冠は長さ5mmほどで、2唇形で下唇は3裂します。
イヌトウバナ
シソ目シソ科シソ亜科クルマバナ属イヌトウバナ
高さ20~50cmの多年草で、花期は7~9月です。
ミヤマトウバナの変種で、低地~山地の林内に生えます。
葉は対生し、卵形~狭卵形です。縁には粗い鋸歯があります。
花冠は長さ5mmほどで、上唇が2裂、下唇は3裂します。
雄しべは4本、雌しべは1本あります。
花のがく片には、開出する長毛があります。
ミヤマトウバナとの違いは、花穂が短く何段も輪生状にならないことと、がく筒に長毛が生えることです。
ナギナタコウジュ属
ナギナタコウジュ
シソ目シソ科シソ亜科ナギナタコウジュ属ナギナタコウジュ
高さ5~60cmと高さの変異が大きい多年草で、花期は8~10月です。
野山の草地や林縁に生え、全体に強い香りがあります。
葉は長さ3~8cmの卵形で、縁には鋸歯があります。葉の裏面には腺点が無数にあります。
花序は茎頂や枝先、葉腋について薙刀(なぎなた)状にカーブし、多数の花が一方向に偏って密につきます。
花冠は長さ4~5mmで先が4裂し、4本の雄しべが突き出ます。
がくは5裂し、多毛です。苞は心形で先がとがります。
全草を乾燥させたものは、コウジュという生薬となるそうです。
ヤマハッカ属
ヤマハッカ
シソ目シソ科シソ亜科ヤマハッカ属ヤマハッカ
高さ40~100mの多年草で、花期は8~10月です。
野山の林縁や草地に生えます。
葉は対生し、葉身は長さ3~6cmの広卵形で縁に粗い鋸歯があります。基部は細くなって柄の翼となります。
花は茎頂や枝先の穂にまばらにつきます。
花冠は2唇形で長さ7~9mmです。上唇は4裂して立ち上がり、下唇は2裂して前に突き出て内側に巻きます。
クロバナノヒキオコシ
シソ目シソ科シソ亜科ヤマハッカ属クロバナノヒキオコシ
高さ50~120cmの多年草で、花期は8~9月です。
山地の林縁や沢沿いに生えます。
茎は直立、または弓なりになります。
葉は柄があり、対生します。長さ6~15cmの三角状広卵形で先はとがり、縁には鋸歯があります。
花は散房花序にまばらにつきます。
花冠は2唇形で、上唇は浅く4裂して立ち上がり、下唇は舟形で前に突き出ます。
がくは筒状で5裂し、油脂質の腺点が密にあります。
葉を飲むと起死回生の薬効があるとされることから、ヒキオコシの名前がつきました。
シロネ属
ヒメシロネ
シソ目シソ科シソ亜科シロネ属ヒメシロネ
高さ30~70cmの多年草で、花期は7月下旬~9月です。
低地の湿原や水辺に生えます。
葉は線状披針形で、やや斜上してつきます。
葉の縁には先が曲がった鋭い鋸歯があります。
花は葉腋につき、花冠は長さ5mmほどで先が4裂し、上唇はさらに2裂します。
がく裂片の先は針状です。
コシロネ
シソ目シソ科シソ亜科シロネ属コシロネ
高さ30~50cmの多年草で、花期は8~9月です。
低地~山地の湿地に群生します。
葉は菱状卵形で長さ3~4cmで、縁には浅い鋸歯があります。葉の先も鋸歯も鋭くは尖りません。
花は葉腋にまとまってつきます。
花冠の上唇は浅く2裂、下唇は深く3裂します。
雄しべは2本、雌しべは1本です。がくは5裂し先が尖ります。
ハッカ属
ハッカ
シソ目シソ科シソ亜科ハッカ属ハッカ
地下茎から地下茎を立てて高さ20~100cmになる多年草で、花期は7~9月です。
低地~山地の湿った草地に生えます。
葉は対生し、長さ4~7cmの狭卵形~卵形です。先が尖り縁には鋸歯があり、裏面には腺点があります。
花は上部の葉腋に玉状にかたまってつき、花冠は長さ4~5mmです。白毛があり先が4裂します。
雄しべは4本、雌しべは1本あり、がくは5裂します。
芳香があり、ハッカ油を採るために栽培されます。
イヌコウジュ属
ヒメジソ
シソ目シソ科シソ亜科イヌコウジュ属ヒメジソ
高さ15~40cmの1年草で、花期は8~9月です。
低地~山地の日当たりの良いやや湿った所に生えます。
葉は対生し、卵状菱形で柄があります。葉の縁には4~6対の粗い鋸歯があります。
花は穂状にまばらにつき、花冠は2唇形で長さ4mmほどです。
雄しべは4本あり、うち2本が長いです。
イヌハッカ属
ミソガワソウ
シソ目シソ科シソ亜科イヌハッカ属ミソガワソウ
高さ50~100cmの多年草で、花期は7~9月です。
山地の湿った斜面や沢沿いの明るい場所に生えます。
花冠は筒状の唇形花で、長さ2.2~3cmになります。
唇形花の下唇は3裂し、中央裂片には濃色の斑点があります。
雄しべは4本で、うち2本がやや長いです。
木曽川の支流・味噌川付近に多く生えていたことから、ミソガワソウの名前がついたそうです。
ウツボグサ属
ウツボグサ
シソ目シソ科シソ亜科ウツボグサ属ウツボグサ
茎は根元で曲がり、直立して高さ10~30cmになる多年草です。
花期は6~9月とされていますが、11月に咲いている花を見ることもあります。
低地~山地の草地や道端など明るい所に生えます。
茎と葉には白い毛が密生します。
葉は対生し、長さ1~3cmの柄があります。
葉身は三角状長卵形で、長さ2~5cmです。
花は茎頂の長さ3~6cmの穂につき、花冠は2唇形で長さ1.5~2cmです。
上唇は兜状で、下唇は3裂します。雄しべは4本あり、うち2本が長いです。
花の様子が弓矢を入れる靭に似ていることから、ウツボグサの名前がついたそうです。
イブキジャコウソウ属
イブキジャコウソウ
シソ目シソ科シソ亜科イブキジャコウソウ属イブキジャコウソウ
地面を這って伸びる矮小低木で、立ち上がり高さは10cmほどになります。
花期は7~8月で、海岸~高山の岩地に生えます。
葉は十字対生して葉身は厚みと光沢があります。
長さ1~1.5cmの卵形で先は円く、両面に腺点があって芳香がします。
花は茎の上部にまとまってつき、がく・花冠共に5裂します。
花冠は2唇形で、上唇が2裂、下唇が3裂します。長さは7~8mmです。
雄しべ4本が突き出ますが、うち2本が長いです。
全体に良い香りがあり、薬用・香料として利用されます。
滋賀県の伊吹山で見つけられたことから、イブキジャコウソウの名前がつきました。
シソ属
シソ(赤紫蘇;帰)
シソ目シソ科シソ亜科シソ属シソ
高さ100cmほどになる一年草で、花期は8~9月です。
もともとは中国大陸原産の植物で、日本でも平安時代には栽培されていたようです。
葉は対生し、長い柄があります。広卵形で先が尖り、縁には鋸歯があります。
総状花序に多数の花をつけます。
食中毒を起こして死にかけた人に紫のシソを食べさせると蘇った言い伝えから、「紫蘇」という名前がついたそうです。
キランソウ亜科
キランソウ属
セイヨウジュウニヒトエ(帰)
シソ目シソ科キランソウ亜科キランソウ属セイヨウジュウニヒトエ
高さ10~30cmの多年草で、花期は5~6月です。
ヨーロッパ原産の帰化植物で、観賞用に栽培されていたものが野生化しました。
道端や空き地など明るい場所に生え、地上に這う茎を伸ばして群生します。
葉は対生し、紫色をおびます。縁に浅い鋸歯があります。
対生する葉状の苞の脇に、長さ1cmほどの唇形花をつけます。
クサギ属
クサギ
シソ目シソ科キランソウ亜科クサギ属クサギ
高さ2~5mになる落葉樹で、花期は8~9月です。
平地~山地の林縁や川岸など日当たりの良い所に生えます。
葉は対生し三角状心形~広卵形で、長さ8~20cmです。鋸歯はありません。
花は径約2.5cmで、花冠は5裂します。
雄しべは4本、雌しべは1本あり、平開した花冠から突き出ます。
がくは5裂し、蕾の時は緑色~白色ですが、開花時は赤紫色になります。
開花直前の花です↓
果実は径7mmほどの球形で、10月頃光沢のある藍色に熟します。
花弁のように見える赤紫色の部分はがくです。
枝や葉を傷つけると悪臭がすることから、クサギの名前がつきました。
花は甘い香りがします。
ニガクサ属
ツルニガクサ
シソ目シソ科キランソウ亜科ニガクサ属ツルニガクサ
高さ20~50cmの多年草で、花期は7~8月です。
野山の林内に生え、細い地下茎が伸びてやや群生します。
葉は対生し、長い柄があります。
葉身は長さ4~10cmの狭卵形で、縁には不揃いの鋸歯があります。
花冠は長さ8~10mmで2唇形です。2裂した上唇裂片は小さく、3裂した下唇の側片状となります。
がくは5裂して、腺毛が密生します。
ツルニガクサという名前ですが、つる状植物では無く、茎や葉に苦みも無いそうです。
タツナミソウ亜科
タツナミソウ属
エゾタツナミソウ
シソ目シソ科タツナミソウ亜科タツナミソウ属エゾタツナミソウ
高さ15~40cmの多年草で、花期は6~8月です。
山地の林内に生えます。
葉は長い柄があって対生し、葉身は長さ2~4cmの卵状三角形で、縁には粗い鋸歯があります。
花は茎上部に穂状につき、花冠は筒部が長い2唇形で長さ2cmほどです。
花には腺毛が密生します。
花が咲く様子を泡立つ波に見立て、タツナミソウの名前がつきました。
ナミキソウ
シソ目シソ科タツナミソウ亜科タツナミソウ属ナミキソウ
高さ15~40cmの多年草で、花期は6月下旬~8月です。
細長い地下茎を伸ばして群生することが多いです。
海岸の砂地や草地、時に山地の草地にも生えます。
海岸に生える個体は背が低く、内陸の草地に生える個体は背が高いようです。
全草に軟毛が多いです。
葉は対生し、長さ1.5~4cmの長楕円形で先は円いです。縁には鈍い鋸歯があります。
花は茎上部の葉腋に1個ずつ2個が同じ向きにつきます。花冠は2唇形で、長さ2~2.5cmです。
海岸の波が来るような場所に生えることから、ナミキソウの名前がつきました。
オドリコソウ亜科
オドリコソウ属
オドリコソウ
シソ目シソ科オドリコソウ亜科オドリコソウ属オドリコソウ
高さ30~60cmの多年草で、花期は5~6月です。
野山の草地や林縁、道端に生えます。
葉は卵形で先が尖り、縁には鋸歯があります。長さ5~10cmで十字対生します。
花は上部の葉腋に数個が輪生状につき、花冠は基部が曲がって立ち上がります。
花冠の長さは2.5cmほどで、2唇形で上唇は帽子状、下唇は3裂して中央裂片はさらに2裂します。
雄しべ4本のうち2本が長いです。がくは5裂します。
ヒメオドリコソウ(帰)
シソ目シソ科オドリコソウ亜科オドリコソウ属ヒメオドリコソウ
高さ10~25cmの2年草で、花期は4~5月です。
ヨーロッパ原産の帰化植物で、道端や空き地に生えます。
茎は基部で分枝して4稜があり、短毛が散生します。
葉は対生し、下部はまばらで長い柄があり、密集する上部ほど無柄に近くなります。
葉身は心形で縁に浅い鋸歯があります。
葉の表面にはしわが多く、紫褐色をおびることが多いです。
花冠は長さ1cmほどです。
モミジバヒメオドリコソウ(帰)
シソ目シソ科オドリコソウ亜科オドリコソウ属モミジバヒメオドリコソウ
高さ10~25cmの2年草で、花期は4~5月です。
ヨーロッパ原産の帰化植物で、道端や空き地に生えます。
ヒメオドリコソウよりも葉の鋸歯が深く切れ込みます。
イヌゴマ属
イヌゴマ
シソ目シソ科オドリコソウ亜科イヌゴマ属イヌゴマ
高さ40~80cmの多年草で、花期は7~9月です。
原野や野山の湿地に生えます。
茎は断面が四角く下向きの刺毛があります。
葉は対生し、長さ4~10cmの披針形です。粗い毛が多く、裏面脈上に刺毛があります。
花は輪生状に数段つき、5裂したがく歯は針状です。
花冠は長さ1.5cmほどで、2唇形で3裂した下唇に濃色の斑紋があります。
雄しべは4本、雌しべは1本あります。
果実の形がゴマに似ていますが、食用にならないためイヌゴマの名前がつきました。
ジャコウソウ属
ジャコウソウ
シソ目シソ科オドリコソウ亜科ジャコウソウ属ジャコウソウ
高さ60~100cmの多年草で、花期は7月下旬~9月です。
山地の沢沿いや湿った林内に生えます。
茎は四角く根元が木質化して硬く、弓形に伸びます。
葉は長さ10~20cmの長楕円形で、縁には鋸歯があります。先が尖り、基部は耳状にくびれます。
花は葉腋につき、花冠は長さ4~4.5cmです。筒形で先は2唇形で、上唇よりも3裂した下唇が長いです。
雄しべは4本、雌しべは1本あります。がくは5裂します。
葉が良い香りをすることからジャコウソウの名前がつきました。