かつてユリ科は約290属5000種を含む大きな科でしたが、近年のDNA解析による分類(APG)の結果、5目17科ほどに解体されました。
残ったユリ科植物は、15属約700種とされています。このうち日本国内に分布するものは9属です。
ユリ科の花の特徴は、三数性です。外花被片(がく)が3枚、内花被片(花弁)が3枚の計6枚の花被片を持ち、雄しべが6本、子房は3室に分かれています。
栽培種としてなじみのある花、チューリップはユリ科植物です。
アマナ属
キバナノアマナ
ユリ目ユリ科ユリ亜科アマナ属キバナノアマナ
草丈15~25cmになる多年草で、花期は4~5月です。
低地~山地のやや湿った場所に生え、しばしば群生します。
葉はやや多肉質で粉白色をおび、幅1cm以下の線形です。
花は径2.5cmほどで、花被片は6枚、雄しべは6本、雌しべは1本あります。
1本の花茎には苞葉が2枚、花が数個~10個つきます。
ウバユリ属
オオウバユリ
ユリ目ユリ科ユリ亜科ウバユリ属オオウバユリ
高さ1-1.5mの大型の多年草で、花期は7-8月です。
葉は偽輪生状について長い柄があります。
花は横向きに5~20個つき、長さ12cm径6cmほどです。
花被片は6枚あり平開しません。
果実は上向きにつき、種子は扁平で膜状の翼に囲まれています。
冬でもドライフラワーとなって立ち続けるオオウバユリの姿を見られることもあります。
ツバメオモト属
ツバメオモト
ユリ目ユリ科ツバメオモト亜科ツバメオモト属ツバメオモト
高さは花時で20~30cm、果期はその倍近くになる多年草です。
花期は5~6月で、山地~亜高山の林内に生えしばしば群生します。
葉は茎の下部に数枚つき、やや厚みがあります。柄は無く、長さ20cm前後で広幅のへら形です。
花は径1cmほどで花被片は6枚です。
雄しべは6本、雌しべは1本あり柱頭は3裂します。
果実は径1cmほどの球形で藍色に熟します。この色がツバメの頭の色と似ていることから、その名前が付いたとも言われています。
カタクリ属
カタクリ
ユリ目ユリ科ユリ亜科カタクリ属カタクリ
高さ10-15cmの多年草で、花期は4-5月です。
明るい林内や草地に生えます。
地中にある鱗茎から2枚の葉と花茎を出します。
花被片は長さ5cmほどで6枚あり、後ろに反り返ります。
葉は長さ6~12cmの長楕円形で全縁です。
葉にはふつう紫褐色の斑が入るとされていますが、奥尻では斑が目立たない個体が多かったです。
下の写真は厚沢部町で撮影したカタクリです。奥尻の個体と比べて、葉の紫褐色の部分が大きいです。
稀に白花も見られます。白花の個体が現れるのは、およそ1万分の1の確率だと言われています。
ユリ属
エゾスカシユリ
ユリ目ユリ科ユリ亜科ユリ属エゾスカシユリ
高さ20~90cmの多年草で、花期は6~7月です。
海岸や山地の草原など、明るい場所に生えます。
茎とつぼみには白い綿毛が目立ちます。
葉は線形に近い披針形で、長さ5~10cmです。
花の径は10-13cmで、茎頂に1-5個つきます。花被片は6枚で内側に斑点があります。
雄しべは6本、雌しべは1本です。
花被片の間に隙間があり、すかして見ることができることからスカシユリの名前がつきました。
クルマユリ
ユリ目ユリ科ユリ亜科ユリ属クルマユリ
高さ30~80cmの多年草で、花期は6~8月です。
低地~亜高山の林縁や草地に生えます。
披針形で長さ10cm前後の葉が、茎の中ほどに5~10枚車輪状に1~3段つきます。
花の径は5cmほどで、6枚の花被片は外側に反り返ります。
花の数は1~数個とされていますが、この写真のように10個以上つけている個体もありました。
葉が車輪状につくことから、クルマユリの名前がつきました。
オニユリ(帰)
ユリ目ユリ科ユリ亜科ユリ属オニユリ
高さ1~2mになる多年草で、花期は8~9月です。
古い時代に中国から食用として移入し、野生化した帰化植物です。
花は茎頂に10個程度つき、径10cmほどになります。
花被片は6枚あって外側に反り返り、内側にこげ茶色の斑点があります。
果実はできず、葉腋にできるむかごで増えます。
タケシマラン属
オオバタケシマラン
ユリ目ユリ科タケシマラン亜科タケシマラン属オオバタケシマラン
長さ50-100cmの大型の多年草で、花期は6月です。
山地~亜高山の湿った場所に生えます。
茎は2~3回にわたって2分枝します。
葉は互生し、葉身は長さ6~12cmの卵状楕円形で先は尖ります。基部は心形となり茎を抱きます。
葉の形とその白いすじ模様から、タケシマ(竹縞)という名前がついたと言われています。
花は葉腋から出る一ひねりして折れ曲がった柄の先につきます。
花の径は12mmほどで、花被片6枚は反り返ります。クリーム色をしていますが花の中心部は紫褐色です。
果実は径1cmほどの楕円形の液果で赤く熟します。。
ホトトギス属
ホトトギス
ユリ目ユリ科タケシマラン亜科ホトトギス属ホトトギス
高さ30~80cmの多年草で、花期は8~10月です。
北海道内では南西部にのみ分布します。
葉は互生し、長楕円形~披針形で先は尖り、基部は茎を抱きます。
葉腋に2~3個の花を上向きにつけます。花は径6cmほどで、花被片は6枚あります。
雄しべは6本、雌しべは1本で雌しべの花柱は3裂しさらに2裂します。
花の紫色の斑点をが、鳥のホトトギスの胸にある斑点に似ていることからこの名前がついたと言われています。
ユリ科では無くなった植物
APG分類体系でユリ科では無くなった植物は多く、主なものを下に挙げます。
ユリ目シュロソウ科へ異動
ショウジョウバカマ属 ツクバネソウ属 エンレイソウ属 シュロソウ属
ユリ目チゴユリ科へ異動
チゴユリ(ホウチャクソウ)属
ユリ目サルトリイバラ科へ異動
サルトリイバラ属
キジカクシ目キジカクシ科へ異動
キジカクシ属 スズラン属 ギボウシ属 マイヅルソウ属 アマドコロ属 オモト属
キジカクシ目ワスレグサ科へ異動
ワスレグサ属…キスゲやカンゾウの仲間
キジカクシ目ヒガンバナ科へ異動
ネギ属 ヒガンバナ属 ハマオモト属