自然豊かな北海道奥尻島。そんな奥尻島の西海岸で、夏の間に見ることができる花々について紹介します。
奥尻島の西海岸にはこのようなごつごつした岩が沢山あります。
海岸に生えるピンクの丸いポンポンのような花、アサツキはネギの仲間(ヒガンバナ科)です。ここでは道南の他の海岸よりもアサツキが多い気がしました。
アサツキの花は、たくさんの小さな花が集まって丸い花の形を作っています。
馴染みのある海岸植物ハマヒルガオ(ヒルガオ科)が、ここでも咲いていました。
海沿いにある岩場に咲いていたのは、ハコベの仲間ハマハコベ(ナデシコ科)です。
ハマハコベの花を近くで見ると、花びらが小さいく葉が肉厚なのがわかります。
同じ海岸に咲くハコベの仲間でも、葉が細くて花弁が大きめなのがハマツメクサ(ナデシコ科)です。
海岸で麦のような花を咲かせているのはコウボウムギ(イネ科)です。コウボウムギは昔繊維を筆に使用したので、書道の達人弘法大師の名前が付きました。写真は雌花です。
海岸で目を引く黄色の花、エゾオグルマは海岸に生えるキク科植物です。
スナビキソウは海岸の砂地に生えるムラサキ科の植物で、漢字で砂引草と書きます。
海の近くで咲いている青い花はナミキソウ(浪来草)です。波が来るような場所に生えている草、というのが名前の由来です。
ナミキソウはシソ科の植物です。よく見ると花は2個づつペアになって咲いています。
少し大きめ(3cmくらい)の紫色の花をつけているのは、海岸の砂地に生えるマメ科植物ハマエンドウです。
ハマエンドウと同じマメ科のヒロハクサフジは、小さな花がまとまってつきます。
図鑑に載っていなかったこの植物は、おそらくヒロハクサフジの白色個体だと思います。
ここから海岸の岩場・砂礫地を離れて、少し内陸の方に移動します。
エゾフウロ(フウロソウ科)が花畑を作っています。
雄しべがあるエゾフウロの花です。
こちらは雄しべが落ちた後のエゾフウロです。
エゾフウロはよく分枝し、茂みを作って咲いています。
ヒロハクサフジに似ていて、より細く細かい葉を付けているのは、クサフジ(マメ科)です。
こちらのピンクの花はエゾカワラナデシコ(ナデシコ科)です。海岸近くの草原に生えます。
ツリガネニンジン(キキョウ科)も咲いていました。ツリガネニンジンにニンジンの名が付いたのは、根の形が朝鮮人参に似ているからだそうです。
全体的に白い毛が生えたツリガネニンジンも見つけました。
草原を歩くキジの姿を見かけました。キジはもともとこの島に生息する種でなく、島に移住した人間が持ち込んだもののようです。
こちらの黄色いセリ科植物はホタルサイコです。
山地の草地や岩地に生えるというカノコソウ(スイカズラ科)が咲いていました。カノコソウのカノコは「鹿の子絞り」という染模様と、蕾の付いた状態の花が似ているからだそうです。
つる性植物サルナシ(コクワ)(マタタビ科)の花も咲いていました。
秋になると熟するサルナシの実は、キウイのような味がします。
海岸や沢沿いの岩場に生える植物、バシクルモン(キョウチクトウ科)を見つけました。
丘の方ではゼンテイカ(ワスレグサ科)が咲いていました。
ムシトリナデシコ(ナデシコ科)とブタナ(キク科)の草原もありました。どちらも帰化植物ですがこうしてみると綺麗です。
ここからちょっとだけ奥尻島の観光名所の紹介です。
奥尻島西海岸には、北追岬公園という野外美術館のような公園があります。彫刻家・流政之氏によって製作されたモニュメントが自然の中に設置されています。もちろん入場無料です。
北追岬公園には散策路も整備されており、大岩の下をくぐったりちょっとした探検気分が味わえます。
約300年前、公園の東側にある神威山の斜面で大規模な地すべりが発生したようで、その岩屑なだれの上に作られているのがこの公園です。大きな岩(元は神威山の一部)がゴロゴロしているのはそのためです。
奥尻島西海岸には様々な奇岩が見られます。中でも有名なのはこのホヤのような形をした岩、ホヤ石です。
ホヤ石は、約340万年前に地層に貫入したマグマが冷えて固まった安山岩の岩体です。マグマが急激に冷えてできる柱状節理が観察できます。
東海岸には鍋の取手(つる)に似てたことから鍋釣(なべつる)岩と名付けられた岩があります。
鍋釣岩は約700~300万年前に地層に貫入したマグマが冷え固まり、隆起後に周りの地層が侵食されてできたものです。
岩の右上に生えている植物は、メギ科の低木ヒロハノヘビノボラズです。
蛇も登らないようなトゲのある枝を持つ落葉低木ですが、花は薄黄色でかわいいです。
夏の奥尻の海は「オクシリブルー」と呼ばれる綺麗な青色です。奥尻島は海も山も美しい島です。
参考図書)「海岸ぐるり!道南の地形と地質」前田寿嗣 北海道新聞社